主催:(一財)東京新潟県人会館/東京新潟県人会(企画:文化委員)
日時:2月11日(水・祝) 14:00~16:00
会場:東京新潟県人会館 2階ホール
深海の至宝が切り拓く、日本の新たな未来
2026年2月11日(水)、東京新潟県人会による「第38回 文化講演会 海洋への期待」が盛大に開催されました。会場となったホールには、日本の未来を左右する海洋資源開発の最前線を知ろうと、多くの会員の皆様が詰めかけ、開演前から熱気に包まれました。
講師は、内閣府の「戦略的イノベーション創造プログラム(SIP)」において、「海洋安全保障プラットフォーム構築」プログラムの総指揮を執る石井正一氏です。

「東京から約1950キロ離れた、日本最東端に位置する三角形の島をご存知でしょうか」との冒頭の説明から始まり、スクリーンに映し出されたのは、絶海の孤島・南鳥島でした。
昭和43年に米国から返還されるまでは「マーカス島」と呼ばれていたこの小さな島の周辺海域の深海6000メートルに、日本そして世界の先端産業に必須とされるレアアースが存在し、この海洋鉱物資源を採る世界初の技術の実証に成功した衝撃的なフレーズから、約2時間にわたる熱のこもった講演が始まりました。
講師:石井 正一氏(内閣府SIPプログラムディレクター)

経歴
1949年 出雲崎町に生まれる
1973年 新潟大学人文学部経済学科卒業
同年 石油資源開発(株)入社
2006年 常務取締役 長岡鉱業所長
2014年 代表取締役副社長、相馬プロジェクト本部長
現 在 日本CCS調査(株) ほか顧問、東京良寛会会長、全国良寛会副会長
[内閣府] 戦略的イノベーション創造プログラム (SIP)
2016年〜2019年 第1期「次世代海洋資源調査技術」PD代行
2018年〜2023年 第2期「革新的深海資源調査技術」PD
2023年〜現 在 第3期「海洋安全保障プラットフォームの構築」PD
講演概要
先端産業を支えるレアアースの危機と希望


スマートフォン、電気自動車(EV)などの強力なモーター、風力発電の巨大なタービン、精密な医療機器や最先端の防衛装備品などに欠かせない「レアアース(希土類元素)」の重要性は、少量の添加で高温でも磁力を落とさない産業のビタミン剤としての役割がある。
しかし、その供給は特定の国からの輸入に60%も依存している現状で、1日も早い供給源の多様化、多角化が求められており、その調達源の一つとして南鳥島のレアアース泥がある。南鳥島の排他的経済水域(EEZ)の水深約6000メートルの海底下の層に眠るレアアース泥は陸上のレアアース鉱石が含有する放射性物質や有毒物質を全く検出せず、ハイテク製品の高性能化に極めて重要なレアアースを含有している奇跡の資源である。
水深6000メートルの極限に挑む日本の底力
しかしながら、資源が存在しても、技術的に取り出す技術がないと資源とは言えない。そのため2018年から7年も掛けて、水深6000mの海底下から船上に固体の泥を連続的に揚げる技術の開発に乗り出した。1㎠にかかる圧力は600kg。深海から6000mの船上に揚泥するためには、海外の海洋石油・天然ガスの掘削技術を応用した閉鎖型揚泥方式を採用して、先ずは2022年8月、茨城県沖の3000mの試験を成功させた。この実績をベースに、この度5569mの海底下の地層に挑戦し、レアアース泥を連続的に船上に揚げる試験を世界で初めて成功させた。
暗黒の海底を照らす海中ロボットROVの4Kカメラの映像には、採鉱機器の側を深海魚が悠々と泳ぐ姿が映し出され、この採鉱方式が深海生態系を壊さずに資源を得る証明となっている。
新潟・岩船沖での海中ロボットの威力
更に6000mの深海作業での自律型無人探査機(AUV)である海中ロボット「しんりゅう6000」は、既に2024年に新潟の東港周辺の水深40メートルの海底下に埋設されている海底パイプラインの埋設状況調査に成功していた。こうした点検調査に海中ロボットAUVが使われると、海洋インフラの管理コストを劇的に下げ、調査効率を高める事になる。
さらに、2024年の能登半島地震に伴い富山湾の大規模な湾内崩壊が発生し、約300mに生息する白エビや1000mのベニズワイガニの生態調査を富山県から緊急依頼され、海底設置型観測装置「江戸っ子1号」や海中ロボットを投入した調査を、関係先との連携で成功させ、漁業の震災復興にも貢献する力となっていた。
2027年2月の本格的な採鉱試験に向けて

この試験の成功を受けて、来年2月には1日当り3500トンの効率でレアアース泥を船上に揚げて150km離れた南鳥島にて脱水処理を行い、本土に搬入するための本格的な試験を行う。そのための準備を加速させている。
この試験により、大量のレアアース泥が入手できるので、初めてレアアース泥の成分や濃度が明らかとなり、南鳥島レアアース泥の可採埋蔵量(技術的にも経済的にも採れる資源量)を明らかにすることになる。
また、泥からレアアースを抽出する精製、製錬についても、日本独自のSIPプログラムの研究開発課題として挑戦する意思を表明されていた。
脱炭素社会の切り札、海洋玄武岩へのCO2固定化研究
南鳥島EEZの水深1000mに位置する「拓洋第5海山」への二酸化炭素(CO2)の鉱物化という固定化技術についても、海山にCO2を注入して鉱物化を促進させる技術は、脱炭素社会の実現に向けた世界の最新研究である。
南鳥島周辺の広大なEEZ海域は、レアアース泥資源やCO2貯留という点でも、日本が世界をリードできる可能性を秘めている。まさに世界第6位の海洋国家である日本が、南鳥島や周辺海域の利活用をベースに、深海産業のパイオニアとなるべきであると力説されていた。
*《感想》未来へ繋ぐ「海洋国家・日本」の誇り
石井氏の講演での巨大な国家プロジェクトを動かす原動力が新潟で育った豪雪に鍛えられた新潟県人としての忍耐強さや、春を待つ心であると話されていた。
この熱いメッセージで締められた本講演は、1950キロ以上も離れた太平洋で約1ヶ月以上にわたり孤独な作業を強いられた地球深度掘削船「ちきゅう」から届いた世界初の成功のニュースと共に、参加した県人会の大勢の皆様に深い感銘を刻みました。
来年の試験は、日本の海洋開発での新しい地図を描く事であり、日本の海洋産業への新しいページを作るにに違いありません。
今回の講演会は、その大きな第一歩を私たちに触れさせて戴いた極めて有意義な機会となりました。
(広報委員・その江)
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