卓話者:三条 和男(総務委員)
日時:5月13日(水)
場所:ふれあいふるさと館(県人会館)
「米百俵」に込められた精神~ビデオ視聴会報告
「米百俵」とは、長岡藩の藩士・小林虎三郎が、見舞いとして贈られた百俵の米を売却し、その資金を教育に充てたという故事です。目先の困窮よりも人材育成を優先したこの決断は、「苦しい時こそ未来への投資が大切」という象徴的な言葉として、今日まで語り継がれています。
今回のビデオ視聴会には、多くの会員が参加し、開始前から会場には静かな期待感が漂っていました。映写が始まると、焼け野原となった長岡の情景や、飢えに苦しむ藩士たちの姿が映し出され、参加者の皆さんは深く見入っていました。虎三郎が百俵の米を前に「教育こそ百年の大計、人物を創れ!」と訴える場面では、会場の空気が一段と引き締まり、映像の力と物語の重みがひしひしと伝わってきました。
戊辰戦争で維新政府軍に敗れた長岡藩は、その日の糧にも事欠く悲惨な状況にありました。そんな折、分家の三根山藩から百俵の米が届けられました。藩士たちは当然ながら「早く分けてほしい」と願うが、虎三郎はこの米を分配せず、学校設立の資金として換金することを決断。
「早く、米を分けろ」というきり立つ藩士たちに向かってこう語りかける。
「この米を一日か二日で食いつぶして、あとに何が残るのだ。国が興るのも滅びるのも、町が栄えるのも衰えるのも、全て人にある。この百俵の米を基にして学校を建てたいのだ。この百俵は、今でこそ只の百俵だが、後年には一万俵になるか、百万俵になるか、計りしれない尊いものになるのだ。その日暮らしでは、長岡は立ち上がれないぞ。あたらしい日本は生まれないぞ……」
「教育こそ百年の大計、人物を創れ!」怒りをあらわにする藩士たちを前に、虎三郎は死を覚悟して信念を貫いた。
彼は藩士たちに向かって静かに、しかし力強く語りかける。映像の中で語られる虎三郎の言葉に、参加者の多くが深く頷いていた。視聴後の意見交換では、「今の時代にも通じる話だ」「苦しい時こそ先を見据える大切さを感じた」「教育への投資は決して裏切らないという言葉が胸に響いた」など、率直で温かい感想が寄せられた。
小林虎三郎は明治10年、50歳で病没した。しかし彼の残した「国が興るのも町が栄えるのも、ことごとく人にある」という信念は、現代の日本においても少しも色あせていない。
今回の視聴会は、その精神を改めて胸に刻む貴重な機会となりました。
(会報誌2026年7月号掲載)
今回の卓話者、三條 和男氏による過去の特別寄稿は下記よりお読みいただけます
・【特別寄稿】私の人生観
