上野の森美術館、正倉院展を見て

暮らしのヒント

随想四季(リレー第209回)
細井ミツ子(東京新潟県人会・相談役)

上野の森へ1300年前の正倉院の「宝物」を見に

11月4日、上野の森美術館で正倉院展を見た。娘、息子が行くというので同行したわけです。
膝を悪くした私は一人では不安なので好都合であった。

約1300年前の聖武天皇と光明皇后の時代の宝物で、東大寺に納められているものである。会場の中央には、模造螺細箱や螺細紫檀五絃琵琶、模造銀薫炉など数々の宝物が飾られていた。

「伝説の香り」と言われる、黄熟香の木もガラスケースに入っていたが、この前には大勢の人集まりがあり、直に嗅ぐことができなかった。その香りの入った小さな用器がいくつか並べてあったが、そこも人がたくさん並んでいて、直接香りを嗅ぐに至らなかった。

この香木は、室町時代の将軍、足利義政や織田信長、明治天皇も切り取られたことがあったという。
奈良や京都にはしばらく行っていないので、国家珍宝帳という、600点以上の宝物の目録は、光明皇后が書いたもので、聖武天皇にささげた深い想いが記されているという。

「書」に多少の興味を持つ私は並んででも拝見したかったのだが、ここも長蛇の列ができていて、1mぐらい離れたところからしか見られなかった。細字が綿々と並んでいるのが見えたが、詳しく読むことができなかった。見終った後に出口で入場券を見せると、また何がしらかのお金を払い、黄熟香の香りを小さな紙に移したものを求めた。

「黄熟香」の高貴な香りをわが家で味わう

家に戻り、早速その香りを嗅ぐと、なんと高貴な香りなのだろうと思った。今まで求めた香水とは全く違ったものであった。自然木の中でこれほど高雅な香りは類を見ない。
私はすべて本物が見られるものと、心を弾ませながら行ったのだが、大きな画面にいろいろな宝物を映して放映していたが、すべてレプリカだったのです。

考えてみれば、東大寺に納められている宝物の本物をそうは持ち出せないはずである。
自分の早や呑み込みに苦笑した。こうした展覧会を見る際にいつも思うのは、会期中のいつに行ったらいいのだろうか。初日は混むだろうし、終わり近くも混むので、中間ぐらいの日がいいのだろうか。いつもごったがえしの日にぶつかるので、これからは考えてみたい。

親子で久しぶりの楽しいひと時を

レプリカで昔の宝物を再現した、現代の名工も素晴らしいと思った。
帰りには上野駅の中のレストランで食事をした。成人すると親から離れていくが、久しぶりに親子で楽しい一時を過ごすことができた。食事をしながら1300年前の日本の名工と言われる職人の技術の素晴らしさに驚き、これからもずっと続くことへの憧れと、期待を話し合った。外に出るともう夕闇が迫っていた。

(会報誌:2026年2月号掲載)