卓話者:小山 裕基氏(在南スーダン共和国日本大使館次席・参事官)
日時:11月12日(火) 15:00~17:00
場所:ふれあいふるさと館(県人会館)2Fホール
在南スーダン共和国日本国大使館に勤務の小山裕基氏から標記のテーマによる卓話が行われました。
小山さんは大学卒業後、外務省に入省しました。外交官として、サンフランシスコやタイなど7カ国8カ所を経験されて、現在は、南スーダンの日本大使館に勤務されています。
高い経済成長率で世界の関心を集めるアフリカ
外交官の仕事は、日本の安全と自由貿易を守るために外交交渉に向けた情報収集と分析のほか、相手国との良好な関係を築き開発協力や文化交流を促進し、邦人援護など広範な業務を通じて日本と相手国との関係を強化し国際的な協力推進する役割を担っています。開発協力については、世界の全196カ国のうち、多くの国が貧困や食料不足に困っており、食料や気候、感染症など地球規模の課題が数多くある中で、発展途上国の発展を手助けし、世界共通の課題に取り組んでいます。
アフリカは、54か国に約14億人を擁し、豊富な鉱物資源、比較的高い経済成長率で世界の関心を集めています。一方、一部のアフリカ諸国は深刻な債務超過の状況に陥っており、国内法の執行・運用の不透明性などの投資環境上の課題も多く、同時に、紛争やテロ、武力による政権奪取を含む政治的混乱が平和と安定を脅かしている地域が存在し、依然として深刻な貧困を含む開発課題を多く抱えています。
もともと南スーダンもその一部であったスーダンは、アフリカ大陸の北東に位置しており、世界最長のナイル川が縦断、スエズ運河の後背地として地理的にも古くから中東とアフリカとを結ぶ重要な役割を担っています。
この地域は、歴史的にも他民族の侵入や王朝の興亡、キリスト教やイスラム教の伝播など幾多の変遷を重ねています。人々の構成も、肥沃なナイル川沿いは農耕民、草原が広がる中西部は遊牧民、アラビア半島に近い北部はアラブ系(イスラム教徒)、サブサハラ・アフリカにより近い南部はアフリカ系(キリスト教、土着信仰など)など多様性に富んでいます。(スーダンの語源はアラビア語の「黒い人」です。)
南スーダンは世界で最も新しい共和国
南スーダンは、2011年にスーダンの南部10州が分離独立した世界で最も新しい共和制国家です。人口は約1300万人で、石油資源が豊富な国ですが、長い内戦を経てスーダンから独立したものの、南スーダン人同士の衝突など、長い紛争のさまざまな爪痕が残っています。現在は取り敢えず、停戦状態を維持しています。
アフリカの開発をテーマとする「アフリカ開発会議(TICAD)」が、1993年に日本政府が主導し、国連、国連開発計画(UNDP)、世界銀行及びアフリカ連合委員会(AUC)との共催で始められました。昨年は、TICADの設立30周年を記念して行事「TICAD30年の歩みと展望」を東京で開催しました。来年2025年に横浜で開催されるTICAD9を視野に入れ、アフリカとの戦略的なパートナーシップの構築に繋げていくことに取り組んでいます。また、「人への投資」などの日本らしい取組を通じて、アフリカ諸国との一層の関係強化に努めています。
講演後の質疑では、国の外交政策や大使館の仕事等、普段直接聞くことのできない話に参加者は耳を傾け、有意義な卓話となりました。小山さんには、今回、休暇で帰国中の身でお忙しい最中に時間を割いていただいたことに感謝します。
