「なぜ、スギの葉は細く、サクラの葉は広いのか」(3/3)

暮らしのヒント

「緑の惑星」の奇跡

地球は「奇跡の惑星」ともいわれていますが、この奇跡を可能にしているのが、大気及び水の循環であり、このシステムの原動力が太陽エネルギーです。光合成は、この太陽中心の大気と水の循環システムの中で、有機物の循環=緑の循環を行っています。

地球上の有機物蓄積量(乾燥重量/バイオマス)の約92%は森林が占めています。これは光合成の産物=糖類を樹体内に蓄積しながら生長を続け、高木・亜高木・低木・草本層が立体的な空間をつくり、太陽光を効率的に利用していることによります。同時にこの多層空間が多種の生物の生活の場となっています。

近年、気候変動対策として、森林の糖類貯蔵機能(二酸化炭素吸収=炭素貯蔵)への認識が高まり国際的取組みが具体化しています。この機能は、樹木が光合成と呼吸を同時に行い、二酸化炭素と酸素の吸収・排出量の差を蓄積するという離れ技に由来します。炭素・酸素・水素の3元素が結合して樹体内で糖類を生み出す仕組みは神業です。この奇跡を大切にしたいものです。

小さな葉の話が大きな地球の話に飛躍しましたが、この拙話が樹木の生き様のおもしろさ、そして「緑の循環」については考える契機に寄与するところがあれば幸いです。

羽賀正雄による講演の様子01
羽賀正雄による講演の様子01

羽賀正雄による講演の様子02
羽賀正雄による講演の様子02

(会報誌:2022年07月)