卓話者:小川 哲幸(東京十日町会)
・日時:9月9日(火)
・場所:ふれあいふるさと館(県人会館)
講師の経歴

小川氏は1967年に十日町市で生まれ、十日町高校を卒業後、1986年に航空自衛隊に入隊。
翌年、海上自衛隊航空学生として再入隊し、回転翼事業用操縦士資格を取得、館山基地や厚木基地をはじめ舞鶴基地、大湊基地など各地で勤務。
総飛行時間は約5000時間に達した。その間、SH-60K、L等の哨戒ヘリコプターや、P-1 固定翼時機能向上等の航空機の研究開発実務に携わるほか、人事システムや艦載機の開発にも関わった。
また、2件の航空事故調査の経験や、海外派遣(海賊対処等)の経験も有する。 退官後はへリコプターのシミュレーター教官として、東京航空計器株式会社に勤務している。
V-22オスプレイについて
V-22(愛称:オスプレイ)は、米国のベル社とボーイング社が共同で開発したティルトローター式垂直離着陸航空機です。 オスプレイの名称はタカ目の中型猛禽類の一種の「ミサゴ」を意味します。
「ミサゴ」は、魚を主食とし上空で魚を見つけると水面までダイブして魚を捕らえ、そして、上空へ垂直に離脱して魚を海岸まで運んで食べるというその生態が、ティルトローターという夢の性能を有する機体のイメージにぴったりだったことからこの愛称を付けられました。


米国で、v-22オスプレイの開発機運が高まったのは1980年のイランからの人࣭質救出作戦の失敗がきっかけでした。ヘリコプターの飛行距離、固定翼機の着陸場所の制約をなんとかしたい。
この課題に対する回答えが、ヘリコプターのように垂直離着陸やホバリングを行うことが出来、固定翼機のように長距離を速く飛行できるティルトローターという航空機です。
国はこの機を島嶼防衛の象徴的存在として、アジアの安全保障のため日本に配備していると説明しています。
しかし、従来の航空機とは異なり、エンジンポッドの角度を変えて飛行するという「変形機構」を備えることから、未だ安全性を疑問視する声も少なくありません。

実際、沖縄本島などで米軍機が不時着事故を起こしていることなどから、「危険な航空機」というネガティブな印象があるものの、実は多くの問題がすでに解決され、安全性を徹底的に追及された航空機であり、航空専門家等の有識者でこの航空機を危険視する人は殆どいません。では、開発期から今まで生起した事故は一体何が原因だったのか。その殆どが人的要因なのです。日本人にとって、記憶に新しい2016年12月13日に起きた沖縄での海兵隊機の事故は、洋上での夜間空中給油訓練中に、空中給油機から伸びた給油ホースが当該機に接触したことが発端の事故です。当該機が所属する米軍海兵隊普天間基地は住宅密集地域に在ること及び操縦士が異常振動を感じたことから、機長は普天間までの飛行をあきらめ、別の海兵隊基地に隣接する海岸に固定翼モードで緊急着水する決断をしました。 この不時着水事故を名護市は墜落という、事実と異なる内容で発表していますオスプレイは1980年代から開発が始まりましたが、開発初期には複数回の墜落事故等で23人が死亡するなど「未亡人製造機」と呼ばれたこともありました。
オスプレイと安全の考え方 一般的な「安全」の概念
広辞苑の定義では、危険のないこととされていますが、現実にはリスクが常に存在するため、この定義は「自然界にはあり得ない世界」であると述べています。ISOの国際規格では、安全とは「許容できないリスクがないこと」であり、許容可能なリスクは、時代や技術の進歩によって、変化するとしています。
2021年現在、V-22
オスプレイの事故の要因 は、ほぼ「人的要因」です。 ということは、許容できないリスクをなくすためには、「常 に適切な整備を怠らず、運用手順の見直しや操縦訓練の充実によってヒューマンエラーを限りなく低減する」。
このことに尽きるのではないでしょうか。これは民間機も同じです。
オスプレイが危険視される理由
小川氏はオスプレイが危険 視される背景には、いくつかの要因があると説明しています。
悪評の発端は、軍上層部の稼働率の向上に対する要求に現場が応えられず、整備記録を改ざんしたことがリークさ れ、この機体に対する信頼性及び軍の運用態勢への信用が揺らぎ、当時発生した事故と「未亡人製造機」というキー ワードが反響を呼び、ポスト・トゥルース(世論形成において、客観的な事実よりも個人の感情や信念が人々の意見に強い影響力を持つこと)が生じ、確証バイアスやエコーチェンバー現象といった、自分の信念や仮説を裏付ける情 報ばかりを集め、それに反する情報を無視したり軽視したりする認知の偏りが、SNS上で発生した結果、「オスプレイ=危険な航空機」というイメージが一般大衆に定着してしまった理由と言えます。
まとめ
安全とは「ゼロリスク」で はなく「リスクが管理された状態」です。
オスプレイは危険視され、その行動の逐一が報道されたりしますが、実際機体には高い安全性が確保され、皆さんが危惧するような事故は抑止されています。
問題は機体よりも人的要因に多く、加えて、情報伝達や風評による誤解が横行し、大衆に不安を植え付けてしまったというのが実態です。 また、元自衛官の視点から、特に軍事的機密性の確たるものとする装備品に関する風評については、プロパガンダを警戒し、情報の発信源について特に精査する必要があります。
失敗から学ぶことの重要性
小川氏は会場からの質問に対する回答の中で、失敗を恐れて新しい技術開発をやめてしまうと、技術は進歩しないと強調しています。航空機開発の歴史は失敗の積み重ねと妥協の産物であり、ひとつひとつの失敗から教訓を学び、それを次の成功に活かすことで、安全性が向上してきたと述べています。
また、航空機開発のような長期的なプロジェクトを支援するには、政治家や国民の理解が不可欠であると訴えています。失敗を受容し、それを学ぶ機会と捉える姿勢が技術的な進歩を可能にすると述べ、現在オスプレイの運用に関するリスクは完全に制御化にあると述べて講演を締めくくりました。
講演後に、会場から多くの質問が寄せられ、どれも丁寧かつ的確に回答されて、理解がさらに深まりました。
(文責:及川恒夫/会報誌2025年11月号掲載)
