「現代の中国情勢と今後の展望― どう理解し、向き合うか」

会の活動報告

卓話者:横井 裕氏(前中国駐劄特命全権大使)
日時:令和4年9月13日
場所:ふれあいふるさと館(県人会館)2Fホール
主催:総務委員会

 本年は日中国交正常化50周年にあたり、今後のあるべき日中関係について、前中国駐在特命全権大使・横井裕氏をお招きし、ご講演をいただきました。

 横井裕氏は、40年以上に亘る外交官生活の中で、外務省中国課長、有償資金協力課長、マレーシア大使館公使、米国大使館公使、上海総領事、外務報道官、トルコ大使などの要職を歴任され、2016年からの4年半は、駐中華人民共和国特命全権大使を務められました。

卓話者:横井 裕氏
卓話者:横井 裕氏

 講演では、外交官として長い中国との関わりの中で得られた知見をもとに、これからのわが国が中国とどう向き合っていくか、中国の広大で多様な自然環境や国土(日本の約26倍)や人口(14・1億人)、強大な国家成立から4000年の歴史などの背景をよく理解する必要があると強調され、中国古代の王朝時代の成り立ちからアヘン戦争などの近代における中国と西洋の衝突や中華人民共和国の建国、建国後の中国共産党の成立と統治、改革開放政策推進、さらに習近平国家主席の政治的バックボーンまでの歴史的・政治文化的背景をわかりやすくお話しいただきました。
 中国の歴史面における注目すべき点として挙げられたのは

  • ① 先進的な人材登用体制 「科挙」
  • ② 世界GDP全体の30%以上
  • ③ 中国に無いものはない「地博物大」
  • ④ 「登録人口6千万人の壁」人口増加と貧窮の悪循環、300年続いた王朝はない。

会場の様子①
会場の様子①

習近平国家主席が前例を無視して3期目の政権を実現しようとしている理由
  • 中華人民共和国建国後、毛沢東、鄧小平は死ぬまで権力を離さず。
  • 江沢民も軍事委員会主席の地位を長く離さず。
  • 胡錦濤だけが2期10年に従う。その結果レームダック化。
  • 習近平の狙いとしては、共産党統治の継続と実績作り、経済発展と「過去の歴史」以外の統治の正当性中国の夢「一帯一路」など新時代の中国の特色ある社会主義国家の実現。

会場の様子②
会場の様子②

現状
  • ゼロコロナ政策の堅持 ―国民に大きな不満、不信。
  • ロシアのウクライナ侵攻の行方と影響 ― 経済減速、不動産市況、債務問題、雇用問題(大学新卒、農民工)。
  • 20回党大会の注目点 ―政治局常務委員人事(後継者)、総理人事
これからの日中関係のあり方について

 日本と中国の経済的な結びつきの強さがある一方で、対等な日中関係の歴史は、日中国交正常化以来のわずかな期間しかなく、お互いに相手をよく理解するための交流が必要で、重要と指摘された。


習近平の⽣い⽴ち
○ 1953年(昭和28年)⽣れ。
○ ⽗親は習仲勲副⾸相1962年失脚。(鄧⼩平が背後に?)
○ 69年から75年まで陝⻄省梁家河に下放。
○ 8度⽬の申請で⼊党。
「指導者の⼦弟でありながら、⽗親の失脚により幼少期から苦労の連続。」
「最底辺の中国⺠衆の実情を知っている。⾃分に⾃信を持てた。⽂化⼤⾰命に肯定的な経験。」

(会報誌:2022年11月)