日米地位協定と今の米中対立

会の活動報告

卓話者:櫃間 道夫氏(東京十日町会員)
日時:令和4年11月8日
場所:ふれあいふるさと館(県人会館)2Fホール
主催:総務委員会

 今回は東京十日町会の会員で、現在のお住まい川崎市麻生区で、永年、市民団体組織「多摩21紀会」を主宰されてきた櫃間道夫さんをお招きし、ご講演いただいた。

 新聞報道でしばしば目にし、在日米軍基地の問題で争点となっている「日米地位協定」の締結の経緯や不平等の問題点について解説された。
 以下、その要旨:
 「日米安全保障条約」(1952年締結、1960年改定)は、表向き、日本の安全を守るものだが、米国の本音は基地を思いのままに維持・存続することにあった。そこで明確に不平等な事項は「安保条約」ではなく「行政協定」(国会審議が不要。後に「日米地位協定」と改称)に押し込め、また日米合同委員会(原則非公開)での密約により、今でも占領時代と大差のない不平等が続いている。
この実態が日本国民全体の意識に上りにくい原因の一つには、米軍基地の7割が沖縄に在って、沖縄以外の日本人の多くが自分の問題と実感しなかったためだろう。

1 日米地位協定の具体的問題点の数々
①多数の米軍基地
②横田空域・岩国空域・嘉手納での空の支配
③米軍に特権を与える航空特例法
④事故時にも日本の捜査権が及ばない
⑤米兵の犯罪を日本側が裁けない
⑥民事裁判権密約
⑦在日米軍関係経費の6割を日本側が負担
⑧環境汚染
⑨ドイツ、イタリアなど諸国では自国の法律や規則を米国にも適用させている

2 地位協定問題を越えて進む日米の軍事協力
 地位協定の改定が実現しない一方で、「ガイドライン(日米防衛協力のための指針)」、「シーレーン防衛」、「周辺事態法」などで両国の軍事協力の態勢が進み、2015年の「集団的自衛権」など安保法制の制定によって、米軍支援のための自衛隊の武力行使が可能になった。
 これら一連の流れを日本政府は「日本の安全のため」と説明し、日本人の多くも「安保条約で米国が日本を守ってくれる」と考えているが、それは幻想であり、米国は日本を米国防衛のための盾にしたいのだ。

会場の様子①
参加者からは真剣な質問も多数

3 米中対立と核ミサイル戦争
 米軍は第一列島線状の島々に海兵隊を分散配置し、そこを一連のミサイル発射拠点とする計画だ。表向きは射程距離の短い地対艦ミサイルだが、裏には中距離ミサイル(中国本土まで届く)がある。これに対して中国もミサイル戦力を強化するはずだ。米軍が中国本土を攻撃すれば報復の対象となるのは日本列島全体となる。米軍自身は戦況次第で一旦、グアムやハワイに引き下がる構想もある。何れにせよ、戦火を浴びるのは日本であり、米国本土ではない。

4 日本を再び「戦場」としないために
 今、殆んどの日本人が知らないうちに大変な事態が進行している。そんな中で日本が行うべきことは、米国追随の「抑止力強化」ではなく米中の緊張を和らげ、衝突を予防する「仲介外交」の促進だ。

会場の様子②
熱心に講演を聴く参加者

5 さて、あなたはどう考える?
 ある日、突然、「こんな筈ではなかったのに」とならないよう、私たちは、様々な機会に話し合い、意見交換をして取るべき道を模索せねばなるまい。世論の盛り上がりが大切だ。

(会報誌:2023年1月)