新潟県『方言集成』

暮らしのヒント
新潟県のことばの文化遺産を集大成

本書は、新潟日報事業社の創業70周年記念出版の大著(全762頁)。本書はもともと著者外山正恭氏が同社より『新潟県方言集 土の香』(2019年1月刊)として自費出版していたもの。
本県全域を網羅した約4万語にも及ぶ方言の意味や用例を50音順にまとめたその内容が高い評価を受け、品切れになり、再刊の要望が多数寄せられたこともあり、同社では、内容はそのままで、書名を『新潟県方言集成』と改題、再刊したという。本書の特徴をかいつまんでいえば、
1.新潟県内にみられる江戸時代からの290の方言集を集成。
2.各方言集の掲載語を全て見出し語とし50音順に登載。
3.新潟県の各郡市町村をほぼ網羅し、方言使用地域を明記。
4.方言の味わいを伝える用例も豊富に採録。
著者・外山正恭(とやままさやす・1938~)氏は、本書の「はじめに」で──
「……人々の営みは広く、深く、興味深い。歴史、風俗、伝説……。そして、暮らしの中のことば(地域の言葉、方言)に関心を寄せる人々は実に多い。したがって、新潟県には先学の貴重な業績が多く、それを通じて学ぶこと、気付かされることも多い。それは、地域に暮らし、地域を愛してやまない人々の方言集を中心とした業績である。……」

それでは、厚みが4㎝程もある、私の愛書でもあるこの『新潟県方言集成』を開いてみよう──
167頁の3段組の上段。
私にとって、懐かしい言葉 かがっぽい
眩(まぶ)しい。まばゆい。光があたってまぶしい。…
「太陽がカガッポイ」、「天気のええ雪道がカガッポクテ歩かんないて」原典の「方言集」の刊行地域=方言の使用地域を示す表記は、実に29地域にも及び、ほぼ新潟県全域で使われていることを示している。
558頁の上段──
はちゃ
それじゃ。それでは。ではまた。はちゃまあ。挨拶。サヨウナラの代わり。
こちらは、刈羽、柏崎、北魚沼、南魚沼、中魚沼、十日町……など、僅か7地域。
私などが、中学生のころ友達と別れる時、「はちゃ、又な」というように日常語として使っていたこの言葉は、意外にも、私たちの魚沼地域特有の言葉であったことを始めて知ったのだった。(2020年7月 樋口 高士)


新潟県『方言集成』
外山正恭 編著
新潟日報事業社
発刊:2019.12
定価:4,500 円