遠藤実の想い出 心の故郷、新潟は作曲の原点

会の活動報告

一般財団法人 遠藤実歌謡音楽振興
財団理事長、遠藤実記念館館長

卓話者:遠藤 由美子 氏

 郷土新潟に縁があり日本を代表する作曲家、遠藤実先生の長女(養女)遠藤由美子さんをお招きして「遠藤実の想い出」というテーマのお話と、ご本人の持ち歌や遠藤実メロディーを熱唱していただきました。
 遠藤実さんは1932(昭和7)年に東京葛飾で生まれ、第二次世界大戦中に両親の実家である現在の新潟市西蒲区に疎開しました。高等小学校卒業後、14歳で日東紡績内野工場に就職。地元の楽団に入団しバンドマスターの勧めで専属歌手として音楽活動に入りましたが、1949(昭和24)年に歌手を目指して家出し、上京。その列車の中で「東京に出てどんなにつらいことがあっても歌の勉強をし、戸籍をよごすようなことだけは絶対にしません。」と家族に手紙を書いた。座右の銘に「春の来ない冬はない。明日は今日よりきっとよくなる」。
 その後、様々な職を経てギターを携えての流しの演歌師となったが、この経験が後の作曲家人生に大きな影響を与えました。


JR内野駅前にある遠藤実顕彰碑

 初ヒットは、1957(昭和32)年の藤島桓夫『お月さん今晩わ』です。疎開先の新潟で育った時の郷愁をつづった千昌夫の『北国の春』や『星影のワルツ』をはじめ、学業へのあこがれを託した舟木一夫の『高校三年生』、森昌子の『せんせい』、渡哲也の『くちなしの花』など世に送り出した楽曲は5,000曲以上。
 親しみやすく美しいメロディーを兼ね備えた夢あふれる歌心は、赤貧洗うがごとき苦難の生い立ちの中で磨かれたものだった。

 「歌手が鉄なら作曲家は鍛冶屋だ」と千昌夫をはじめとする表現力あふれる歌手を育て、音楽文化の豊かな発展と国際理解の深化を目的として1994(平成6)年「遠藤実歌謡音楽振興財団」を設立。生前の主な表彰歴は歌謡音楽に関わる人材の育成に励んだ功績により1990(平成2)年に「紫綬褒章」、2002(平成14)「年勲三等旭日中綬章」、2003(平成15)年には大衆音楽分野の作曲家として初めて「文化功労者顕彰」を受賞した。


実唱館

 レコード大賞選考委員や作曲家協会会長等を歴任しているうちに打合せなど多忙を極め、長年の運動不足も重なって体調を崩し、2008(平成20)年に狭心症を発症し入院。治療を続けるも間もなく急性心筋梗塞のため76歳でその生涯に幕を下ろしました。

 政府から数々の楽曲で大衆音楽の発展に尽くした功績を讃えて「正四位」に叙し、「旭日重光章」を授与され、さらに50年余りにわたり国民に愛される歌謡を作曲して希望と潤いを与えたとして「国民栄誉賞」を授与された。国民栄誉賞の受賞は、作曲家では古賀政男、服部良一、吉田正に次いで4人目の受賞者でもあった。

 私、由美子は長岡の出身です。母親の友人の紹介で17歳で遠藤実の内弟子となり5年目にビクターから「徳巻駒子」の歌手名でデビュー。『湯沢で待つわ』や『ふたり舟』などのシングルやアルバムなどをリリースしました。

 しばらくして、遠藤実・節子夫妻の養子となり歌手を引退しました。父は、生前口ぐせのように、いただいている著作権料は、ふるさとや世の中に少しでも恩返しがしたいと言っていました。その一環として、ふるさと新潟に歌づくり人生で得た種々の品を展示し、歌が持つ面白さや楽しさ、また人々との生活の関わりなどをくみ取っていただきたいと1994(平成6)年に〝実(みのる)が唱う(うたう)館(やかた)〟=「実唱館」(じっしょうかん)を開館しました。


実唱館


実唱館

 私は現在、「自分がこうしていられるのも皆さんが作品を愛してくださるお蔭だ」という父の理念(皆さんへの感謝の思い)を踏襲し、「一般財団法人 遠藤実歌謡音楽振興財団」の代表理事と越前浜の遠藤実記念館「実じっしょうかん唱館」の館長を務めております。

 また、2015(平成27)年より音楽の普及啓蒙のため「遠藤実ソングフェスティバル」を開催しています。もっともっと遠藤実メロディーを歌ってくださる一般の方々の大会として新潟に根付いて、新潟に訪れた方々が実唱館にも足を運んでもらえたらいいなと思っております。

 また、2017(平成29)年3月、JR内野駅前のロータリーに「北国の春」の歌詞・譜面が彫り込まれ、ボタンを押すと3曲のメロディーが流れる「遠藤実顕彰碑」を皆様の募金により建立することができました(3曲:『北国の春』歌/ 千昌夫、『高校三年生』歌/ 舟木一夫、『ふるさとよありがとう』歌/ 遠藤実)。

 私共の活動資金は、父の遺した歌の著作権料ですが、限られた資金と限られた人数で、できる限りのことを一生懸命やっていきたいと思っております。

 この活力の源は、遠藤実ご夫妻の生き方と背中を見て育ったからです。
 「歌の力は無限大、不滅の心です。」と結ばれた。(総務委員会 2019年6月)

写真引用
遠藤実記念館「実唄館(じっしょうかん)」

実唄館ご案内
住所:新潟市西蒲区越前浜6913-1
TEL :0256-77-2277
FAX :0256-77-2776