尾畑酒造株式会社

にいがた情報
「金の道」小木街道の宿場町真野新町に栄えた酒蔵の系譜

佐渡の金銀を江戸に運ぶために、相川と小木港を結ぶルートを整備したのが小木街道。「真野鶴」醸造元の尾畑酒造がある真野新町は、その中間点にあり宿場町として栄えた。

ゴールドラッシュにより江戸時代の初期に人口が急速に拡大した佐渡。増えた人口に対応すべく田園開拓が進み、米の生産量が増大した。しかし、採掘方法が手掘りであったために、江戸中期には金銀の産出量が減って人口が減少し、次第に米が余り始める。この余り米を酒にして、北前船に載せて島外へと販路を求めたのが、佐渡の酒造りが盛んになっていったひとつの要素という。

当時の真野新町には小佐渡山脈の伏流水が小川となって流れ込み、この川の水がたいへん良い水であったことから、山本家が酒造業を貞享年間に始めている。この酒造場が受け継がれて、街道を挟んで斜向かいの場所に尾畑酒造は明治25年に尾畑輿三作(よそさく)の手により創業する。

幸醸心と四宝和醸


尾畑酒造の経営理念は「幸醸心(こうじょうしん)」。酒を醸すことで、幸せを醸し出していこうというものだ。その対象は、お客様はもちろん、お取り組み先、社員、さらには地域へと広がる。この言葉から派生したのが酒造りのモットーである「四宝和醸(しほうわじょう)」だ。
酒造りの三大要素である「米」、「水」、「人」に、醸しの地であり、これら三大要素を育む佐渡を加え、「四つの宝の和をもって醸す」“四宝和醸”という言葉を生み出し、地域に根差した酒造りに励んでいる。

世界農業遺産の島・佐渡


周囲250㎞以上、東京23区の約1.4倍の広大な面積を持つ島・佐渡。北には大佐渡、南には小佐渡山脈が峰を連ね、冬には多くの雪を戴く。四方を海に囲まれていることで、佐渡に降る雪は地上の影響をほぼ受けないため、どこまでも白く、それが融けて地中深く染み込んだものが自然の濾過の恩恵を受け、再び地上に湧き出す際は清冽を極める。まさに佐渡の水は質・量ともに酒造りをするのに最適なものといえる。

また、佐渡は米処としても優秀だ。日本一の優良米産地である新潟の中でも、魚沼と並び称される名産地として知られている。中でも「真野鶴」を製造するために使う酒米は、主に島内南部に位置する羽茂地区の山間部で清水により育てられた「五百万石」と、稲作名人である相田さん(佐渡相田ライスファーミング)を始めとした酒造りに理解がある方々による「越淡麗」、さらには咋年から新規に作付けを始めた佐渡産「山田錦」を中心に、全国平均を大きく超える平均精米歩合56%までに磨き上げて使用している。

なお、佐渡市は平成23年6月11日に「生き物を育む農法」への取り組みで世界農業遺産(GIAHS)に認定された。尾畑酒造でも既に《朱鷺と暮らす郷づくり認証米》制度に則って環境に優しく、減農薬・減化学肥料による酒米の契約栽培は行ってきており、今後ますます佐渡の自然環境、そして醸造地としての環境を考慮してこうした活動に力を注いでいく。

若き蔵人たちが挑む伝統の手造り


杜氏・工藤賢也(昭和46年6月23日生まれ)。岩手大学を卒業し、かつて日本一の栄誉(東京農大主催・全国清酒品評会主席1位獲得)を手にしたベテラン越後杜氏に師事し、その後、南部杜氏の下でも勉強、平成12年秋に29歳という若さで尾畑酒造の杜氏に就任した。

20代から40代中心の若い蔵人たちを率いて、今では減少している仕込み中全期間に及ぶ完全泊り込みと早朝仕込みによる伝統的な手造りを実践し、6年連続を含む全国新酒鑑評会で11回の金賞を受賞。

また、毎年ロンドンで開催されている世界最大のワインコンテストであるインターナショナル・ワイン・チャレンジにて2007年、2014年、2015年と日本酒部門で三度のゴールドメダルに輝くなど数々の実績を残している。


真野鶴・大吟醸無濾過原酒瓶燗火入れ


越淡麗・純米大吟醸「真野鶴・実来(みく)」


真野鶴 辛口吟醸


真野鶴・純米吟醸


特別純米酒 壱穂


真野鶴・辛口《鶴》

★主な受賞暦(令和2年10月現在、2001年以降)

〇2020年
全国燗酒コンテスト 熱燗部門 金賞受賞(真野鶴・辛口鶴)
全国燗酒コンテスト ぬる燗部門 金賞受賞(真野鶴・純米鶴)
KURA MASTER 純米大吟醸部門 プラチナ賞受賞(真野鶴・純米大吟醸原酒)

〇2019年
全国新酒鑑評会金賞受賞(真野鶴・万穂)
インターナショナル・ワイン・チャレンジ2019
純米大吟醸の部 ゴールドメダル受賞(真野鶴・純米大吟醸・佐渡山田錦)
インターナショナル・ワイン・チャレンジ2019
純米大吟醸の部 シルバーメダル受賞(真野鶴・実来)

〇2018年
関東信越国税局酒類鑑評会 優秀賞受賞
KURA MASTER 純米大吟醸部門 金賞受賞

〇2017年
関東信越国税局酒類鑑評会 優秀賞受賞
KURA MASTER 純米大吟醸部門 金賞受賞
全国燗酒コンテスト2017「お値打ち熱燗部門」最高金賞受賞
全国燗酒コンテスト2017「お値打ちぬる燗部門」金賞受賞

〇2015年
インターナショナルワイン・チャレンジ2015
大吟醸の部 ゴールドメダル受賞

〇2014年
インターナショナル・ワイン・チャレンジ2014
純米の部 ゴールドメダル受賞

〇2008年、2011年、2013年、2014年、2017年、2018年
全国新酒鑑評会 金賞受賞

〇2007年
インターナショナル・ワイン・チャレンジ2007
大吟醸の部 ゴールドメダル受賞

〇2001年~2006年連続
全国新酒鑑評会 金賞受賞

「学校蔵プロジェクト」


佐渡と日本酒の未来を育んでいこうと尾畑酒造が新たに手掛けるプロジェクト。「日本で一番夕陽がきれいな小学校」と謳われた海沿いの丘に佇む旧西三川小学校。2010年に136年の歴史に幕を閉じたこの「学びの丘」を、地域のコミュニティの中心であった学校が朽ち果てるのを留めたいという思いから、2014年に「酒造」「学び」「交流」「共生」を柱とした酒造場として再生した。

一本目の柱が「酒造」。佐渡産の酒米を100%使用して純米酒を醸し、そこに佐渡の新潟大学演習林の天然杉を浸漬することで木造校舎の木のぬくもりを感じさせる風味に仕上げる(注:新規に清酒製造免許の取得が困難なため、当面は樽酒とまったく同じ風味だがリキュール表記となる)。オール佐渡にこだわり、米の需要増にも貢献していく。また、この酒をベースにした柚子酒、梅酒の製造も開始している。

二本目が「学び」。酒造りを学べる場としても活用、国内外より希望者を受け入れている。製麹から3段仕込みまでの一週間をじっくり体験してもらうことで、ブランドのファン作りだけでなく、日本酒のファン作りからプロ養成のお手伝い、さらには長期滞在による佐渡のコアなファン作りにもつなげていくことを考慮している。

三本目は「交流」。かつて地域のコミュニティの中心であった学校が、新たな交流拠点へ。外部講師を招いて、島内外の多様な世代の方々と日本の縮図と言われる「佐渡から考える島国日本の未来」をテーマとした年1回の「学校蔵の特別授業」をはじめ、様々な大学などとの連携交流も進める。

そして最後が「共生」。自然との共生を考慮して電気に関して理論上100%太陽光による再生可能エネルギーを使用。また、朱鷺との共生のため減農薬減化学肥料栽培等に基づく「朱鷺と暮らす郷づくり認証米」を積極的に導入している。他にも使われることなく落ちるままとなっていた農家の柚子を活用して、地域との共生を進めるなどしている。

(広報: 2018年2月/広報委員 山田セイ子)

尾畑酒造株式会社

新潟県佐渡市真野新町449
☎:0259-55-3171
HP:https://www.obata-shuzo.com/home/

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