本書は、いまから600年前、永享六年(1434年)5月、佐渡に流罪となった世阿弥(1363〜1443?)が、かの地でどう生き、何を見つけたのかを描く長編小説である。
文庫版443頁に及ぶ本書の構成は
序章 島影
第一章 奇縁
第二章 埋もれ木
第三章 配処
第四章 炎旱
……第五章(略)第九章……
第十章 照応
第十一章 老木
第十二章 涙池
終章 花
「序章 島影」では、1434年、72歳の世阿弥が、若狭小浜港を出て、能登の珠洲の岬をへてはるばる船旅で佐渡に到着した時の情景が描かれている。
「船頭殿……あの松の見える岬は……」朝焼けは強くなり、佐渡島を覆う溢れるばかりの初夏の緑や、岩を露わにした粗い山肌、白い刃のような砂浜がはっきりと浮かびあがり…「あれは、松ヶ崎でございます」
次の第一章からは、世阿弥と伴の六左衛門と島の人たち、寺の住職・却全、了隠、小童、たつ丸、小娘おとよさんなどをはじめとする多くの人たちとの、晩年九年間に及ぶ交流が事細かく描かれている。
「終章 花」では、世阿弥の佐渡での最後の演能が詳細に描かれている
佐渡島の正法寺では、毎年、蝋燭能が行われている。本書最終章の世阿弥の佐渡での最後の演能は、その蝋燭能のはしりとなったものである。
正法寺の境内に梅の花がほころんだ頃、世阿弥作「西行桜」がシテ世阿弥、ワキ・了隠、笛・六左衛門、小鼓・たつ丸、太鼓・村人 ……と世阿弥ゆかりの人たちが全て集まり、奉納されたのであった。
●著者紹介●
藤沢 周(ふじさわ・しゅう)
昭和34年(1959年)、西蒲原郡味方町で生まれる。新潟明訓高校を経て1984年法政大学文学部日本文学科卒業。1998年「ブエノスアイレス午前零時」で第119回芥川賞受賞。
本の情報
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(広報・樋口)
(会報誌:2026年2月号掲載)
