伝統的工芸品 羽越しな布 生業の里

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ふるさとの暮らし 日本の原風景

リポート 佐藤 勝(東京村上市郷友会・広報委員会副委員長)

 我がふるさと村上で昔から作られていた工芸品の“しな布”について、現在どうなっているか調べてみることにした。
 “しな布”製品を今は亡き私の叔父が東京の銀座たくみという民藝品店に卸していたこともあり60年近くも前の古い物だが私の手元にあり、今でもしっかりとしていて懐かしい品となっている。

しな布の製品
しな布の製品

人の手がふれるたびしなやかに柔らかくなるしな布。その変化こそが魅力なのかも知れない。村上市役所や市内の物産施設に、現在“しな布”の製造や販売はどうなっているか聞いてみたところ、今でも山形県境に近い山熊田という集落で生産されているとのことで連絡先などを教えて貰った。
 山熊田の集落には、さんぽく生業(なりわい)の里という施設があり、そこでしな布製品や赤カブ、トチ餅等の製造や販売が行われているという。

さんぽく生業の里外観
さんぽく生業の里外観

 山熊田という集落は、山の中にあり、現在は車で便利になったとはいえ、国道7号の府屋という集落から30分程県道を入ったところにあり、なかなか行くことのない過疎の集落だったはずである。
 早速、生業の里に連絡してみると年配の女性が出て、教えてもらった責任者の國井千寿子さんと後日連絡が取れ、いろいろお話が聞け、資料を送ってもらうことにした。数日後、立派な資料が届き驚いた。
 山熊田の集落は、以前は30世帯200人位が住んでいたが、少子高齢化と過疎化のため現在では16世帯41人の寂しい集落になっていた。
 この過疎化に挑戦し、村おこしとして立ち上げたのが「生業の里」である。「村の男は熊を追い、女は機を織る」という集落で昔から伝えられてきたマタギ(山奥に入っての狩猟)や“しな布”作り、山での炭焼き、焼畑から作られる「灰」を活用した山・川からの恵みを生かした料理法などに再度目を向けた。

糸車をまわす大滝ムツ子さん
糸車をまわす大滝ムツ子さん

はた織り機
はた織り機

 かつては日本のどこにでもあった人々の暮らしと日本の原風景がここに残っていて、それらが生活のために生まれ引き継がれてきた伝統的技法の手作業や食文化を外に向け紹介し、訪れる人に実体験してもらう活動をスタートさせたのが2000年である。
 “しな布”は厳しい冬の期間に織り受け継がれてきたもので、古くは農作業着やコメ袋など実用品として作られ、現代ではバッグや帽子、暖簾といった芸術品のような製品も作られている。

しなの木(左)からしな布ができるまでの各工程品
しなの木(左)からしな布ができるまでの各工程品

 毎年梅雨の時期に山に入り、“しな”という樹木を伐採し、その樹皮を剝ぎ、皮から繊維を取り出す際に灰(炭焼きや焼畑で沢山とれる)の力を利用して糸にし、農閑期に各家で昔から伝わる織機を使い伝統的な技術と技法で織られたくさんの労力と手間がかかっているものである。2005年には「羽越しな布」として伝統的工芸品に指定されている。

問合せ先:さんぽく生業の里
☎0254-76-2115
さんぽく生業の里:https://www.city.murakami.lg.jp/site/kanko/sanpoku-nariwai.html