第47回「卓話の時間」 旧・統一教会問題、その影響と対処

会の活動報告

卓話者::山口 広 氏(弁護士・全国霊感商法対策弁護士連絡会 代表世話人)
日時:令和5年5月16日
場所:ふれあいふるさと館(県人会館)2Fホール
主催:総務委員会

カルト被害救済の第一人者の語る旧統一教会問題

今回の卓話者・山口広氏は、1949年福岡県に生まれる。1972年東京大学法学部卒業、1975年司法試験合格。
早くから消費者問題に関心を持ち、世界基督教統一神霊協会(統一教会、統一協会)等カルト被害者救済の第一人者で、1987年に全国霊感商法対策弁護士連絡会が結成されて以来、事務局長として取り組まれ、現在代表世話人として活動している山口広氏をお招きし、お話をお聴きした。

会場の様子1
挨拶する春日寛・弁護士

霊感商法とは、霊感があるかのように振舞って、先祖の因縁や霊の祟り、悪いカルマがあるなどの話を用いて不安を煽り、印鑑・数珠・多宝塔・壺などの商品を法外な値段で売り、不当に高額な金銭などを取る商法です。
霊感商法を組織的に展開している団体としては旧統一教会(現 世界平和統一家庭連合)が知られる。この団体は、「日韓併合の罪を清算するために日本人は韓国に貢献しなければいけない」という教義の下で日本人にだけ霊感商法を含む搾取行為を行っている。特に1980年代から社会問題となった。「日本が戦前に韓国を併合し、韓国に攻め入った、それが日本人の罪」「罪を清算するために日本人は韓国に貢献しなければいけない」という文鮮明教祖の主張に従って大金を出さされるという仕組みになっており、日本人だけが高い商品や金銭を要求される非常に差別的な宗教となっている。

会場の様子2
熱心に聞く参加者たち

安倍元首相銃殺と旧統一教会問題

Q1 なぜ36年もこの問題に取り組み続けてきたのか
 A1 人のよい人が人生・家庭を破壊される悪質性
 A2 弁護士への攻撃・いやがらせがあって引く気になれない意地
 A3 宗教を悪用して社会を歪めることが許せない(宗教は大切、火と同じ)

Q2 統一教会の他宗教にない特色
 A1 宗教、経済、政治、言論等の組織を傘下に持って「地上天国-天-国」の実現を目指す
 A2 コリアン民族主義、日本への怨念(韓国人と結婚した在韓7000人の日本人女性がいる)
 A3 霊界の存在、霊界の地獄で先祖が苦しみ地上の子孫に救いを求めていると教え込む(これが霊感商法で不安をあおって献金勧誘の手段)
 A4 罪意識の植えこみ-原罪、連帯罪、遺伝罪、自犯罪(これが信者を言いなりに酷使する手段)

Q3 全国霊感商法対策弁連の取り組み
 A1 1987(昭和62)年2月 東京で弁護士連絡会発足
 A2 5月 全国で全国霊感商法対策弁護士連絡会発足

宗教法人法81条の解散をどう具体化するか

 そもそも法81条の解散請求の要件は、同条1項1号の「法令に違反して、著しく公共の福祉を害すると明らかに認められる行為をしたこと」という条項が中心となる。
 岸田首相の決断で解散に向けた歯車はゆっくり、しかし着実に回り始めた。

2022年12月10日成立の「不当寄付勧誘規制法」

7月8日の安倍元首相の殺害事件を機に世論が喚起され、不十分でも新法ができたことは、35年間のことを考えると感慨はある。しかし、内容は無いよりましの程度。弁護士としてはこれまでどおり不法行為責任で損害賠償手続をするが、その過程で新法を参考として活用するしかない。消費者庁が6条の勧告・公表、7条の行為停止勧告・命令を積極的に発することをどこまでやれるか。
経産省が高島易断の幸運の光(教団)に特商法違反で業務停止命令を出した例(平成23年8月判決)がある。
相談会で被害者が殺到。248件9億8千万円と353件9億9千万円

宗教二世問題について

統一教会の祝福家庭の二世が貧困と人間関係の制約、合同結婚式参加強要などの「虐待」を受ける深刻さは他のカルト的宗教団体より格段に深刻

政治家の旧統一教会との連携の問題

与野党を問わず、政治家が旧統一教会(UC)と連携
①関連団体のイベントに祝電を出す
②イベントに参加して挨拶をする
③寄附を受領し、UCや関連団体にカンパ・会費を支払う
④選挙応援(組織票を割り当てられる。信者らに戸別訪問、電話勧誘、ビラ配り、事務局的業務をさせるなど)
⑤政策協定文書調印

これらの問題をどう考えるか。それぞれの視点から考える。

UCにとって
①刑事摘発、行政処分など政治的に圧力をかけてもらえる。
②政治家の支持・賛同を受けているすごい団体、「地上天国」は実現すると思いこませ、組織固め、組織拡大になる。
③UCに疑問を持ち出した信者や関わり続けるか迷っている人に続けること更に深入りさせることになる
④統一教会の主張(夫婦別姓反対、同性婚反対、LGBT反対や家庭こそ大事―子ども家庭庁のネーミング等の実現運動)の推進をとおして、地方首長、市県議等と交流を深め、日韓トンネル推進等の議決も出させる。
⑤これらの運動を通して組織拡大になる。献金勧誘強化にもなる。
⑥最終目標は統一教会による主権復帰(統一教会の教義を国の宗教にする)

政治家にとって
①当落線上の候補者にとって何よりの助け―恩義になる
②派閥のボスが票わりふりなどの力を発揮、さすが〇〇先生
③若者が活動に賛同したり参加しようとしない状況下、選対本部で信者たちが素直でまじめな若者として活動するので十名程でもその活動は立候補者にとってありがたい存在
④労働力を提供しても労賃を要求しないボランティア。しかも戸別訪問、戸別ポスティング、街頭チラシ配り、署名運動は信者にとってお手のもの―議員は助かる(岸前防衛大臣、富山県の新田知事の発言例)

理念的疑問
①コリアン民族主義(反日とは言いたくない)、人権侵害(信者の子どもの処遇虐待など)を政治家は容認するのか―「天聖経」や「マルスム(みことば集)」
②反共産主義(勝共)と言いつつ実際は再臨のメシア文鮮明の王国をつくる運動(今も韓鶴子はメシアを受け入れる国を世界中につくれと繰り返し指示している)
③男性優位、女性は尽くすべきという価値観、家族観の押し付け

メディアの対応について
①初物はニュース扱いしても今も深刻な被害があり、こんな判決も出たと会見してもニュースにさえならないことも
②ウェブメディアの浸透で、それを見れば足りるという人たちが増大
③一方で片寄ったメディアの情報しか見ないため、陰謀論やフェイクニュースに影響されがち
④ともかく活字メディアの衰退が心配

随所に山口先生のご経験を踏まえたエピソードが挿入され大変に分かりやすく、かつ興味深いものでした。
講演後には、会場から多数の質問が寄せられましたが、その一つ一つに丁寧かつ的確な応答がなされて、内容の理解をさらに深めることができました。

会場の様子3
真剣に質問する参加者

(文章:総務委員会 及川恒夫)