演題:佐渡の旧家と人脈
講師:郷土史研究家 渡辺 和弘先生
主催:首都圏佐渡連合会・文化芸能部会
昨年末の12月3日(土)、東京新潟県人会館ホールに於いて、首都圏佐渡連合会・文化芸能部会の活動の柱であります第13回文化講演会が開催されました。
今回はコロナ禍の中、3年振りとなる開催にも関わらず、86名という会場いっぱいの参加者に聴講頂き、また懇親会にも58名参加という想定以上の盛り上がりとなりました。
講師は佐渡市在住の郷土史研究家の渡辺和弘先生の『佐渡の旧家と人脈』という演題で約2時間の講演で、佐渡が輩出した著名人、葛西敬之(JR東海鉄道・名誉会長)や有田八郎(外務大臣)の家系と人脈を中心に、渡辺先生の幅広い知識の一端をご紹介いただきました。
演題:佐渡の旧家と人脈
最初の著名人は、JR東海鉄道・名誉会長の葛西敬之(よしゆき)氏のお話。葛西家は代々、佐渡(羽茂)の医者であり、漢学者。父の葛西順夫(のぶお)氏は中学の国語・漢文の教師。
祖父の葛西千秋氏は10才で上京し、現在の開成中学・高校、一橋大学を経て文部省の高官(教学課長)に就くが、その要職を投げ打って、1941年に現在の佐渡の羽茂高校校長として赴任される。
祖父(千秋)の孫・葛西敬之氏は、1963年に東京大学法学部を卒業後、日本国有鉄道(国鉄)に入社、国鉄改革の三人衆の一人として、国鉄の分割民営化に尽力されました。
また葛西氏は現在注目を浴びています「山形有朋(明治時代の首相)」本を安倍・元首相に勧めた人でもあります。2022年5月25日、間質性肺炎のため死去。81歳没。
渡辺 和弘講師
続いて二人目の著名人の外務大臣・有田八郎氏については、1835年に佐渡市真野町新町・山本家の七男として生誕、二男の農林大臣・山本悌二郎の実弟の八郎が二歳の時、八郎は父の友人(相川町)の有田家の養子(有田八郎)になりました。
その後、有田八郎氏は、上京して一高から東京帝国大学(現在の東京大学)法学科を経て外務省に入省、各国の領事館・大使館および本省アジア局長後、4度の外務大臣を歴任。1965年2月に相川町名誉町民(第二号)。1965年3月4日死没。
さらに続いて三人目の著名人の北一輝(思想家・革命家)は、両津湊で酒造業を営む北家の長男。
1933年に書き上げた『日本改造法案大綱』を基に右翼活動に参加し、1936年の二・二六事件の際、直接行動に加わらなかったが、背後の首謀者として逮捕され、翌年に処刑されました。
ところで北一輝氏の「生家保存運動」について語り、聴講者の中に北一輝の生家を購入された松沢顕治氏や、その生家にて出版事業を計画されている本間大樹氏が演壇に並び、北一輝・生家の今後の保存計画(例えば北一輝記念館構想)について紹介して頂きました。
北一輝記念館構想が始動
他に『芸能関係の佐渡人脈』として、佐渡高校出身の鎌多俊興氏(歌手・作曲家)や井上良一氏(音楽家)、山本三男三郎(真野出身)、阿部海太郎(音楽家)ほか、戦中・戦後の佐渡の芸能関係文化人の紹介をされました。
例えば、佐渡高校卒業の鎌田俊興氏が作曲の三橋美智也の「哀愁列車」(250万枚売上)の楽譜が母校・佐渡高校の金庫に秘蔵のお話や、「哀愁列車」と「佐渡おけさ」との似たリズムについて渡辺講師ご自身が歌唱しながら解説されました。
以上、今回の講演は誇れる佐渡出身者の広がりに大変感銘を受けた特別なものとなりました。
(会報誌:2023年2月)